活用ガイド

ArchiCAD

省エネ計算(モデル建物法)の評価方法

Q. 計算対象となる外皮を決める断熱ラインの設定のポイントと注意点について教えてください。

ポイント:
モデル建物法の計算において、断熱ラインは基本的に外気との熱的境界となる外皮が一筆書きで繋がるように考えます(下図のピンクのライン)。ただし、地階の地盤に接する外壁や床は計算対象には含みません。また、塔屋の外壁は計算上存在しないものとみなして、塔屋の屋根面は無断熱の外皮として計算に含めます。つまり塔屋は最上階に無断熱仕様の屋根面があるものとみなして計算するという解釈になります。塔屋の外壁を計算から除外するため、その外壁についているドアや窓といった開口部も計算には含めません。

注意点:
下図のようにカーテンウォール周りではスラブの断熱と連続せず断熱ラインが途切れてしまうことがあります。計算上はこの部分にも何らかの外皮があるものとして計算入力する必要があり、審査機関と協議が必要になります。

審査機関からのアドバイス:
現状、こういった断熱欠損はあまりに一般的に多くあるため、評価においては断熱ラインが連続している(スラブの断熱がカーテンウォールに接している)ものとして扱っています。ただし、実際の建物においては大きな熱損失や空気の流出入が起きてしまい、空調が適切に行われてなくなってしまうため、適切な断熱気密設計が必要となります。計算結果は実態の性能とは同一ではないことには注意が必要です。
※各機関により取り扱いの詳細は異なり、その内容に変更の可能性もありますので、必ずご自身でご確認の上、ご利用ください。

参考:モデル建物法入力支援ツール 解説 Chapter 2. 外皮の評価 P31

Q. 計算対象となる階数・階高の考え方のポイントと注意点を教えてください。

ポイント:
階数は、建築基準法で規定される地上階階数を計算対象とし、塔屋と地階については、原則計算対象外とします。
合計階高は、各階の階高の合計とします。ここでも原則、塔屋と地階は計算対象外とします。また、各階階高はSL間の高さ寸法で測りますが、1階はGLから2FSL間の高さで算出しても構いません。

注意点:
地階は階数に含めませんが、ドライエリアに接する地階の外壁は、外壁として外皮の計算対象となります。

参考:モデル建物法入力支援ツール 解説 Chapter 2. 外皮の評価 P35-36

Q. 1階部分の壁の面積の入力方法(地盤面からの算出方法)について教えてください。

ポイント:
外壁面積は、地盤に接していない外気に接する範囲を全て計算に参入します。例えば、地階は階数に参入しませんがドライエリアなどに接する外壁は外皮として計算に算入します。また、高低差のある斜めの地盤に接する外壁においては外気に接する範囲の外壁部分のみ計算に算入します。

Q. 換気・照明の計算対象室の選択について、ポイントと注意点を教えてください。

ポイント:
モデル建物法では、換気と照明の計算の対象となる室用途が決まっています。換気についてはどの建物用途においても、機械室・便所・厨房・駐車場の4項目からの選択となり、照明については建物用途に応じて入力対象になる室用途が異なります。
Archicadの省エネ計算アドオンツール(BIM sustaina for Energy Sync for Archicad)では、換気もしくは照明の計算対象となる室のチェックボックスにチェックを付けることで、換気もしくは照明の室用途を選択できます。
また、換気は単相の換気設備は評価対象外とでき、照明は①非常灯、誘導灯、②タスク照明、コンセント接続の照明、③演出性確保の照明は評価対象外とできます。(モデル建物法マニュアル参照)

注意点:
換気と照明の両方が計算対象となる室用途は無いので、室用途を明確にしておく必要があります。

参考:モデル建物法入力支援ツール 解説 Chapter 0. 評価をはじめる前に「表0-5-1 仕様を入力する外皮及び設備の範囲」P10

Q. ドライエリアの外皮評価方法のポイントと注意点について教えてください。

ポイント:
モデル建物法の評価方法において、地階の地中壁は計算対象になりませんが、ドライエリア等があり外気に接する部分については入力の対象になります。

注意点:
地面に接する地中壁は計算対象外なので算入しません。

参考:モデル建物法入力支援ツール 解説 Chapter 2. 外皮の評価 P31

Q. 外皮面積の算定方法のポイントと注意点について教えてください。

ポイント:
外壁の面積は、水平方向は壁の壁芯で採寸し、高さ方向は階高の基準となるSLで採寸します。これを各方位かつ断熱仕様別に面積を求めます。
同じ方位・同じ断熱仕様の外壁は各階ごとに分割しても、一体の外壁として面積を求めても、どちらでも構いません。
屋根及び外気に接する床の面積は、全て原則壁の壁芯で採寸します。

注意点:
塔屋部分の水平面積は、Archicadの場合、床要素が基本的に入っていないため(階段室やEVシャフトのため)未算入になり易いので、塔屋屋根の要素を計算に利用することをオススメします。

参考:モデル建物法入力支援ツール 解説 Chapter 2. 外皮の評価 P58-59

Q. 外皮断熱仕様についてポイントを教えてください。

ポイント:
断熱材や開口部の種類・性能・材料特性は多様であるため、選定には十分な知識が必要になります。そのため実際の計画では前例をそのまま踏襲するケースも少ないかと思います。
そこで国交省から「ZEB設計ガイドライン」というサッシが建物用途ごとに作成・発行されています。こちらに平成28年省エネ基準相当の仕様、ZEB(Ready)相当の仕様が掲載されていますので参考にしてください。ただし、これは一例であり、計画によって異なることについては十分にご留意ください。

参考:ZEB設計ガイドライン【ZEB Ready・中規模事務所】

Q. BIM sustaina for Energyでの計算方法は何に基づいていますか?

A. WebproのAPIを使用しているため、計算方法はWebproに準じています。

Q. BIM sustaina for Energyではどのようなアウトプットを提供していますか?

A. 本サービスでは下記の内容を提供しています。

・非住宅用モデル建物法の計算結果の表示。
・省エネ基準への適合とZEB基準の判定が自動で行われ、その結果が画面上で確認できます。
・出力できるものは、省エネ適合性判定の計算結果、申請書(設計内容説明書・計画書)です。
・BEImの各種詳細、部位別平均熱貫流率、方位別開口率を画面上で確認できます。

設計初期からの省エネ性能検討

Q. 省エネ手法(庇、ルーバー、ガラス性能、開口率)などをパラメータにした自動計算は可能でしょうか?

A. Grasshopperのようなパラメータを利用した最適化はできません。ただし、BIM上で設定したガラス性能は省エネ計算結果には反映されます。開口率は計算時に自動算出されます。

対応策:庇・ルーバーに関してはURL( https://shading.app.lowenergy.jp/#/ )にて日よけ効果係数を算出して、BIM上の専用アドオン画面に入力してください。

Q. 初期入力における目標値設定のポイントを教えてください。

A. 2023年度現在においてはBPI,BEIともに1.0以下とすれば省エネ適合性判定(省エネ適判)において適合となりますが、2025年度に予定されている法改正で適合基準がBEI(BEIm)0.8が基準となることが予定されていますので、0.8を目標とすることを推奨します。
BPI(BPIm)については基準改正が予定されていませんが、BEI基準を達成するために設備機器の省エネルギー効率に頼るだけでは基準適合が困難になるケースも出てくることが予想されるので、外皮性能(断熱性能)の向上による空調負荷削減にも取り組むことを考慮して、BPI(BPIm)0.8を目標とすることを推奨します。

Q. 初期入力における断熱材やガラスの仕様はどのように入力すれば良いですか?

A. 寒冷地(省エネ区分の1,2地域)と温暖地(省エネ区分の5,6,7地域)におけるBEI0.6と0.8を目標とした場合の各種仕様については、下図を参考にしてください。なお、この参考値は2,000㎡以上事務所用途を想定しています。※建物の規模や形状、その他の条件によっては記載した目標値の結果とならない可能性もありますので、ご注意ください。

Q. 設備の仕様を変更せずにBEImの値を小さくする方法はありますか?

A. 外皮の断熱性能を向上させることで空調負荷を減らして空調のBEImの値を小さくすることが出来ます。特に開口部は熱損失が外壁の何倍も大きいので、ガラスを2層複層・3層複層にすることやガラス間空気層をガス入り(アルゴンガス)のものにすることで断熱性能を高めて熱損失を減らすことが出来ます。
また、開口部の断熱性能を向上させることも合わせて、日射遮蔽対策を行うことで冷房負荷を削減して空調BEImを下げることが出来ます。

一般

Q. 設定ダイアログにリストが表示されません。

A. スタートガイドの「4.6 Archicadでのモデリング」を参照してください。設定ダイアログにリストアップさせるための条件を記載しております。

設計フェーズについて

Q. 基本計画フェーズで行う簡易な外皮入力での省エネ計算は可能でしょうか?

ポイント:
例えば、下図のようにカーテンウォールの建物でボリューム検討を行う場合、カーテンウォールツールでパネル枚数を1枚としてモデリングすることで、作業の簡易化が可能です。

Q. 基本設計フェーズでシンプル要素で省エネ計算することは可能でしょうか?

ポイント:
基本設計時には、省エネ法のビルディングマテリアルを割り当てたシンプル要素(単層構造)で、省エネ計算が可能です。

注意点:
断熱材の基準線を壁心等の基準線に合わせて下さい。モデル建物法の計算ルールに則るために必要な設定になります。
壁は単層構造と複合構造のどちらにも対応していますが、構成する層に省エネ法のビルディングマテリアルを入れることで各ダイアログのリストに反映されます。そのため、開口部等の建具については省エネ法のビルディングマテリアルが入った壁に配置する必要があります。

Q. 実施設計フェーズで複合構造で入力する場合、どのような点に注意すれば良いでしょうか?

ポイント:
実施設計で使用するような複合構造の壁でも、構成する層に省エネ法のビルディングマテリアルを入れる事で、B-2_断熱仕様の入力シートに仕様情報が記載されます。

注意点:
躯体と断熱材を別々の壁要素で入力する場合は、以下の点に注意してください。

①外皮計算の対象となる開口部は、断熱材が含まれる壁要素に入れて下さい。
B-3シートにおいて、外壁と開口部の関係を正しく表記するためです。

②断熱材の基準線を壁心等の基準線に合わせて下さい。
モデル建物法の計算ルールに則るために必要な設定になります。

建物形状について

Q. 屋根でクロップかソリッド編集されて切り欠かれた壁がある場合はどのように入力すれば良いでしょうか?

A. Archicadの機能の制約により、原則できません。現状の機能では切り欠かれていない外壁の面積が算出されます。

対応策:Excel1を書き出し、Excel上で手入力で修正してください。Excel1のダウンロード方法は下図を参照してください。なお、開口面積を含む外皮面積(躯体芯基準)を別途算定する必要があります。

Q. 地下への階段など壁が地面に埋もれていて1つの壁で省エネ対象・非対象となる範囲が混在している場合はどのように入力すれば良いでしょうか?

A. 混在している場合は計算できません。

対応策:Excel1を書き出し、Excel上で手入力で修正してください。Excel1のダウンロード方法は下図を参照してください。なお、外気に触れる外皮のみの面積を別途算定する必要があります。

Q. R面や斜め壁の取り扱いはどのようにすれば良いでしょうか?

A. 計算で必要な面積の値は実面積とします。そのため、BIMで作成したモデルの実面積を使用します。このような形状の場合は立面の投影面積を扱うことはありません。

Q. 壁と建具の関係について、どのように入力すれば良いでしょうか?

A. 壁は単純構造と複合構造のどちらにも対応していますが、構成する層に省エネ法のビルディングマテリアルを入れることで各ダイアログのリストに反映されます。そのため、開口部等の建具については省エネ法のビルディングマテリアルが入った壁に配置する必要があります。

Q. レイヤーの表示・非表示について注意点はありますか?

A. 各設定ダイアログのリストへの反映は、現在レイヤー表示している要素が対象となります。

特殊形状の評価方法・考え方

Q. 自由曲面や多面体等で実面積が大きくなる場合はどのように入力すれば良いでしょうか?

A.自由曲面や多面体等の面積算定は、原則は実面積で計算します。ただし、凹凸の程度によっては見附面積を採用することができるので審査機関との協議を推奨します。

Q. ダブルスキンのファサードについて、ポイントと注意点を教えてください。

ポイント:
ダブルスキン及び窓システム(エアーフローウィンドウ、プッシュプルウィンドウ)の熱貫流率・日射熱取得率については、建築研究所ホームページで公開されている算出方法資料※を参照ください。また、アドオンソフトでの入力方法については、スタートガイドの「5.4 開口部仕様設定」を参照ください。

注意点:
ダブルスキン及び窓システム(エアーフローウィンドウ、プッシュプルウィンドウ)の熱貫流率・日射熱取得率については、建築研究所ホームページで公開されている算出方法資料※を参照ください。

参考:
算出方法資料※ ダブルスキン及び窓システムの計算方法建築研究所「ダブルスキン及び窓システムの熱貫流率及び日射熱取得率の算出方法」
https://www.kenken.go.jp/becc/documents/building/Definitions/doubleskin_20170406.pdf
日よけ効果係数算出ツール
https://shading.app.lowenergy.jp/#/
簡易的なエクセル算出
https://one-building.co.jp/ダブルスキンの熱貫流率及び日射熱取得率の算定/

審査機関からのアドバイス:
審査は基本的に算出マニュアルに則って考えていただきますが、基本の考え方の枠に収まらないケースが大半なので、案件ごとに事前協議を行って評価方針を一緒に検討しています。
※各機関により取り扱いの詳細は異なり、その内容に変更の可能性もありますので、必ずご自身でご確認の上、ご利用ください。

Q. 日射遮蔽の基本的な考え方について教えてください。

ポイント:
モデル建物法における評価方法では、ブラインドのように開口部正面で日射遮蔽機能については、その有無のみで評価します。一方、庇・袖壁といった開口部周囲に設けた遮蔽機能については、「日よけ効果計算算出ツール」を用いて日よけ効果係数によって評価します。

注意点:
有孔構造の面材や特殊構造の日射遮蔽物についての日射遮蔽効果の評価については、一般的なブラインドではないため、評価解釈について個別に審査機関との協議が必要です。

参考:
日よけ効果係数算出ツール( https://shading.app.lowenergy.jp/#/

審査機関からのアドバイス:
日射遮蔽の機能及び構造を持ったものについては、設計者がどのような解釈で設けているのか、どういう評価方針で設計しているのかが審査での解釈にも繋がりますので、設計意図を明確にしていただくことが求められます。